英国歳入関税庁のオープンバンキング契約

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2020年2月2日、銀行APIなどの金融サービスに特化したシステム基盤を構築するEcospend社が、納税手続きのデジタル化に向けたインフラ整備に関して、英国の国税庁にあたるHMRC(歳入関税庁)との間で300万ポンド(約4億3,000万円)で契約を締結したとプレスリリースで発表しています。

HMRCは2020年9月、納税から振込までの電子納税手続きの自動化を目的として、民間事業者に向けた入札を行っていました。その背景として、これまでの納税手続きは納税者が自身のインターネットバンキングにアクセスし、振込先の指定等を手動で行う必要があり、税額等の読み間違いや不正な手続きなどが問題視されていました。

今回、EcospendがHMRC向けに口座間決済におけるAPIを構築することで、納税者がHMRCのポータルサイト上で振込元の口座を登録し、直接の支払いが可能となるとみられています。納税者の手続きの利便性を向上させるとともに、納税に係るコストが削減できると期待されています。

Ecospendは自社でオープンバンキングAPIを構築し、口座情報利用事業者(AISP)や決済指図伝達事業者(PISP)に提供することで、事業者がユーザーに口座の入出金情報、口座間送金、不正検知機能などを付与したサービスを提供しています。同社の主な顧客先として、BARCLAYS、Santander、Lloydsなどの金融機関のみならず、Revolutやmonzoなど金融サービス企業にもAPIを提供しています。また、銀行口座を紐付けることでモバイル端末のメッセージ上やQRコードから送金が可能な個人間決済サービス “Speedy Pay”を自社で提供しています。

(Speedy Payにおける送金操作: Speedy Pay公式サイトより引用)

同社の創業者兼CEOのMetin Erkman氏は「私たちは、これまでAPIやインフラを金融機関等に向けた構築に尽力してきました。今回のHMRCとの契約により、口座間決済システムを活用した納税手続きの利便性を高めるソリューションの提供が可能となりました。しかしこれはオープンバンキングに向けた一部に過ぎず、政策としてオープンバンキングを推進する為には、エコシステム全体でイノベーションを創出する必要があると考えています」と述べています。

英国ではOBIE(Open Banking Implementation Entity)が中心となり、政策としてオープンバンキングが推進されていますが、今回の動きは金融機関に留まらず、民間事業者の競争力強化に寄与するとみられています。今後、民間事業者のサービスに留まらず公的な手続きにおいてもオープンバンキングに向けた取り組みが活発化するのかが注目されます。

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