英OBIEの後継団体に向けた提言

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2021年3月2日、英国の金融サービス事業者の業界団体であるUK Financeは、同国のオープンバンキング政策を推進を目的とした新たな新法人の設立に関する提言を公表しました

UK Financeは “Open banking futures: blueprint and transition plan”というタイトルのレポートを発表しています。レポートの中でUK Financeは、OBIE(オープンバンキング実施機構)に代わる新法人の設立に関する提言を行っています。提言を行った背景として、2020年6月にUK Financeは、競争市場局(CMA)の実装ロードマップが2020年末に終了することに注目し、オープンバンキングの継続のため、OBIEの機能を民間のサービス会社に移行するモデルを提案していました。今回のレポートでは民間の新法人を設立し、オープンバンキングの実行責任を銀行及び金融業界全体に移行させることを提案しています。新法人の設立及び運用は2022年前期の完了を予定しているとのことです。

新法人の主な役割としては、オープンバンキング施策の管理及び発生する課題の検討等、エコシステム全体のニーズの充足と銀行機能の安全性確保が目的であると述べられています。新法人の特徴としては、非営利の民間法人としての設立が予定されている点が挙げられます。

UK Financeは、新法人の目的を「国内の消費者や中小・大企業が、効率的かつ信頼性の高い決済市場、オープンデータや金融プラットフォームによって利益を享受できるように規制要件を検討し、管理する機関」と位置づけています。

新法人への移行後のオープンバンキングの推進に必要な要件として、技術仕様の統一化と具体的な施策を新法人から提案するべきと提起しており、新法人の組織体制やコーポレートガバナンス、具体的な指針や方向性、監視体制を確立する必要があると述べています。また、移行の一環として、金融サービスプロバイダーが新法人に対し、自社のサービスが「オープンファイナンス」の目的に適合するかという点や、サービス提供の対象者及び利害関係者への影響等についての相談や確認を行う必要があるとのことです。

移行にあたっては、新たに独立した会議体を設置し、議長、業界代表者から新法人の取締役が選出され、他にも消費者代表、業界団体、規制当局の代表者を選出した上で諮問委員会を設立することも検討されています。

UK Financeの決済部門責任者のJana Mackintosh氏は「オープンファイナンスやスマートデータなどのオープンバンキング以外の領域への拡張や柔軟性が今後求められる」と述べており、FCA(金融行動監視機構)がオープンファイナンスという、流動性預金の範囲を越えて、保険、貯蓄預金、住宅ローンなど幅広い金融商品にオープン化を適用する検討を行っているという報道も見られます。

2016年にCMAがOBIEをオープンバンキングに関する実施部隊として設立して以降、既存の金融機関に限らず、PSD2によって定義されたAISP(口座情報サービスプロバイダー)やPISP(決済指図サービスプロバイダー)など新たな金融サービスを提供する事業者に対して広くオープンバンキング施策に向けた支援が実施されてきました。今後のオープンバンキング推進が、新たに参入する事業者の窓口を更に広げ、業界の競争力を強化することとなるのか、引き続き注目されます。

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