米控訴裁がFintech型銀行制度を無効とする州政府の主張を棄却

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2021年6月3日、ニューヨーク州の連邦控訴裁判所は、米OCC(通貨監督庁)がフィンテック事業者向けの銀行免許を付与する事は、国法銀行法においてOCCに認められた権限を超えているというNYDFS(ニューヨーク州金融サービス局)の主張を退ける判決を下しています

OCCは、2018年7月にフィンテック事業者を対象として「特別銀行免許(SPNB免許)」を付与する枠組みである “Fintech Charter”を発行し、預金の受入れなど一部の銀行業務を制限する一方で、銀行として融資や送金業務の取扱を認めていました。

しかしながら2019年以降、複数の州金融規制当局が “Fintech Charter”の発行はOCCの権限を超えていることなどを理由に反発し、ニューヨーク州金融サービス局は “Fintech Charter”の無効を求める訴訟を提起していました。2019年10月、同州の連邦地方裁判所において、国法銀行法は銀行業務の要件として預金の受入れ業務を明確に要求しており、 “Fintech Charter”による「特別目的銀行免許」の付与はOCCの権限を超えているとして、ニューヨーク州金融サービス局側の主張を認める判決を下していました

今回の判決は、2019年10月の地裁判決を覆す結果となりましたが、連邦控訴裁判所のジョセフ・ビアンコ判事は、「ニューヨーク州政府が、OCCの “Fintech Chaeter”の策定によって実際に損害を被った旨の主張が不十分である」と述べ、国法銀行法において銀行業務の定義として預金の受入れが明確に求められているかについて触れられていません。その為、“Fintech Charter”が再び運用される可能性を疑問視する意見もみられています。

企業が国法銀行として銀行業に参入する枠組みとしては、上記“Fintech Charter”に関する訴訟以降、従来の銀行免許と同様の基準でOCCがフィンテック事業者に国法銀行の免許を付与する事例がみられます。今回の判決は、連邦政府と州政府それぞれが銀行免許を発行することが可能な米国特有の事例ではありますが、参入する事業者や消費者の需要に応じた枠組みの検討が今後も進められていくのか動向が注目されます。

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