JPモルガンによる英Nutmegの買収

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2021年6月17日付のFinancial Timesは、米金融大手のJPモルガン・チェースが英国のウェルス・マネジメントサービスを提供するNutmegを買収する契約を締結したと報じています

2011年創業のNutmegは、世界的なロボアドバイザーの草分けに位置付けられる企業で、個人向けに上場投資信託などのオンライン投資や資産運用アドバイスを提供しており、取引手数料と最低投資額を低く設定することで利用者の基盤を広げています。

同社は2019年度において約2,700万ドルの損失を計上しており、顧客獲得の課題を抱えていました。しかし、2020年4月にJPモルガンや英国のチャレンジャーバンクであるStarling Bankなど3社と資産管理機能において提携を行ったことで顧客基盤を広げ、2021年5月時点で14万人以上に利用されています。また、2021年1月から3月までの運用資産残高は前年比で72%増加し、5月時点の総額は約49億ドルに達しており、2020年7月には英国のオープンバンキング制度を活用し、利用者が投資用口座にシームレスに送金できる決済サービスを開始するなど、更に顧客の増加が見込まれています。

(画像: Nutmeg公式サイトより引用)

今回の買収には、JPモルガンが英国の銀行及び投資業への事業拡大を企図していたことが背景にあるとみられています。同社はこれまで積み重ねてきた銀行業の実績を活かし、英国で従来型の銀行及びデジタルバンクを設立する計画を進めており、Nutmegは自社の強みである投資・運用業の経験を活かし、JPモルガンのウェルス・マネジメントサービスの基盤を担うと報じられています。買収の金額の詳細については明らかになっていませんが、約9億7,300万ドル程との見方もあります

買収について、JPモルガンのリテール部門責任者のサノケ氏は「Nutmegと共に個人向けの金融サービスに重点を置き、英国におけるJPモルガンをゼロから構築する」と述べています。英国では、同じく米金融大手のゴールドマン・サックスによって2018年に立ち上げられたデジタルバンク“Marcus”が、2021年度中にロボ・アドバイザー業務の取扱を開始すると報じられており、JPモルガンとの英国のリテール市場における競争が加速するとみられます。

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