インドにおけるアカウントアグリゲーションと大手銀行の参加

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2021年9月2日、RBI(インド準備銀行)が預金口座データの集約及び任意の金融機関等との共有を可能にする制度を制定するとともに「アカウント・アグリゲーターシステム」を構築し、インド国内の大手銀行8行が同フレームワークに参加する予定であるとTechcrunchが報じています

利用者は保有する金融機関の口座情報を集約できるほか、金融機関側は利用者から同意を得ることで顧客データから潜在的な顧客ニーズを捕捉し、サービス戦略の策定に活用できると期待されています。このアカウント・アグリゲーターシステムには、インドのリテール銀行最大手のState Bank of Indiaの他、HDFC、Kotak、ICICI、Axis、IndusInd、IDFC、Federal Bankが参加を表明しており、近日中にシステム展開を開始するとみられています。また、本年8月26日に同国でデジタル決済サービスを提供するPhonePE社がRBIからアカウントアグリゲーターとして承認を受けるなど、事業者の参入も加速するとみられています。

利用者はシステム利用の同意を行った後、数回の操作でAPIによって自己の口座のデータを集約できるほか、承認した金融機関に対して期間を定めて取引情報等を共有することが可能となります。

同国では、これまでにも情報利活用における顧客データの範囲や、各金融機関が保有するデータの相互互換性についての議論がされてきました。今回の新たなシステム構築はデジタル決済の普及が広がる同国において、利用者のキャッシュフロー管理の利便性を向上させるとともに、自身のデータの帰属及び権限を明確にする効果があるとして注目されています。

RBIの副総裁であるRajeshwar Rao氏は「アカウントアグリゲーターはデータの民主化を推進し、利用者のデータの権限をデータを組成する個人に帰属させる効果がある」と述べています

同国ではRBI及びIBA(インド銀行協会)によって設立された国立決済公社(National Payments Corporation of India)が、2016年に銀行間や個人間決済を可能にするデジタル決済システムを構築しています。GoogleやFacebookなどの海外の巨大テック企業のほか、国内で決済サービスを提供するPaytm、PhonePEなども参画しており、2020年末時点で207の銀行が加盟し、月間の取引金額は5,800億ドル以上、約1億人に利用されています。

このアカウントアグリゲーションシステムによるその他の効果として、個人や中小企業が融資を受ける際に必要とされていた明細等の書類提出が不要となるといった手続の簡略化が挙げられます。また、利用者が金融データへのアクセスを増やす事で実態に応じた信用格付けが可能となり、金融包摂の観点でも注目されています。

インドでは個人認証、電子署名やオンライン決済などのデータを流通させるAPIの集合体である “India Stack”が2014年から政府主導で構築されており、同国の国民識別番号制度であるAadhaarナンバーを基礎とした開発が進められています。 “India Stack”はスマートフォンでの利用を念頭にしており、Aadhaarナンバーを用いて金融サービスを受けることが困難な貧困層や若年層の解消を目的に整備されています。今回制度化されたアカウントアグリゲーターシステムと “India Stack”との互換性についての詳細は現時点では明らかになっていませんが、同国におけるオープンバンキング推進にも寄与するものとして今後の動向が注目されます。

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