ノルウェー中銀がCBDCのサンドボックスにERC-20規格を適用

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ノルウェー中央銀行(Norges Bank)がサンドボックス(試験用環境)用としてCBDC(中央銀行デジタル通貨)のERC-20規格※1のソースコードを公開したという報道がなされています。

同中央銀行からの正式なプレスリリースではありませんが、Twitterアカウントから発信がなされています。開発パートナーのNahmii社からは、GitHub上にソースコードも公開されていて、内容としては一般的なERC-20規格に準じている模様です。

なお、ERC-20はイーサリアムネットワーク上で扱える「トークン」の一般的な規格であり、この規格を利用した多様な「トークン」が同ネットワーク上で発行され、現在暗号資産として市場で流通しています(とはいえ、日本の暗号資産交換所での取扱は無いものが多いのですが)。今回、サンドボックスではありますがCBDCにERC-20規格、すなわちスマートコントラクト※2にも対応した暗号資産の技術規格を採用するかもしれない、というニュースが流れたことは、なかなかにインパクトのある出来事でした。

現状、先進各国の中央銀行のCBDCへの対応は実証段階と言えます。CBDCの実際の導入に際しては、金融包摂なども含めて検討すべき事項も多岐にわたるため、拙速に導入ができるものではない、という背景事情も共有されているところです。

また、CBDCにどの様な技術や規格を使うかについては、基本的にどこの国の中央銀行も「ニュートラル(中立性を保つ)」というスタンスです。国の競争力や自国産業保護、セキュリティ対策などを考えると、特定の技術や規格に現段階でコミットすべき段階ではない、という意見もまたよく聞かれるところです。

それゆえに、実験用とはいえERC-20規格を採用してきたノルウェー中銀の動きは注目されます。その背景には、スマートコントラクト=自動化の利点に同中銀が注目しているのではないか、という可能性があります。

ご案内のとおり、DeFi(分散型金融)※3の世界では自動化が極限まで進められ、担保としての暗号資産を、返済が滞ったら即座に自動回収するといったメカニズムなどが、スマートコントラクトを応用することで実現されています。

本年5月頃から、ステーブルコインの価格下落を端緒として暗号資産ヘッジファンドのThree Arrows Capitalが破綻し、連鎖的に暗号資産貸付などを行なっていた新興企業への支援や買収が行なわれてきているところですが、一方でDeFiとして業務を行っていた新興企業群には大きな影響は及んでいません。

その多くは、スマートコントラクトをサービスの中核に据え、パブリックチェーン上に情報を公開しながら運営されていたサービスですが、信用収縮が生じるような場面では、上記の自動回収メカニズムが早期に作動し、難を逃れられたのではないかとも考えられます。

新興企業群の一部が難を逃れたという今回の事実は、スマートコントラクトの自動化メカニズムの将来性を感じさせてくれるものでもありました(破綻関連のネガティブな報道が多いところは残念ではありますが)。なお、スマートコントラクトには脆弱性が入り込みやすいという欠点は初期の頃から指摘されていることではありますが、技術も一定程度成熟をしてきて、利点が欠点に比較しても相対的に大きくなってきた、と見ることもできます。

Nahmii社のブログを見ると、セキュリティトークンなどの実装も今後予定されているとのことです。暗号資産(ERC-20トークン)が利用される経済圏では、スマートコントラクトの自動化の利点が最大限活かされていくことになると想定されますが、この様な経済圏に対してのCBDCの歩み寄りが見えてきていることには、大きな示唆があるのではないでしょうか。

※1 イーサリアムブロックチェーン上で発行・譲渡などが可能なトークンの規格。発行されたトークンが、いわゆる暗号資産として流通する場合も多い。

※2 ブロックチェーン上に実装されたプログラムにより、自動動作する契約のこと。イーサリアムブロックチェーンであれば、ERC-20規格のトークンの所有権の移転などが自動で行なわれる。

※3 Decentralised Financeの略。スマートコントラクトを活用して、金融機関が行なってきた暗号資産の交換業務などを非中央集権的に行う仕組み。

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