本年も大変お世話になりました。
パブリック・アフェアーズ活動を組織化すべく、複数名のプロがチームに加わったほか、ESG関連の活動も本格化し、いつにも増して密度の高い一年でしたが、有難く仕事納めを迎えることができております。
金融関連の政策では今年、決済インフラの変革元年といえる様々な動きがあったほか、給与のデジタル払いなどの整備も進みました。これからの時代のイノベーションに対して、日本の金融インフラが適応していくための道が明確になった年だと捉えています。これらは、過去の決済法制がそうであったように時間をかけて実需が伴っていくタイプの土壌と思いますが、当職としての重要分野である電子決済等代行業においても、金融機関側、プレーヤー側双方に新しい動きがみられており、これから起きるイノベーションへの期待が高まっている感覚があります。
金融以外の政策では、規制改革推進会議や総務省における放送制度検討会の委員をさせて頂くことで、より広範に日本のデジタル化であったり、人口減少社会における公共やインフラのあり方に提言させていただく機会を頂戴しました。様々な金融制度の背景にある、実需の経済を共に活性化することも等しく重要と捉えており、まだまだ力不足とはいえ、より流動性にあふれ、成長したい人の思いを叶えられる経済構造を作っていきたいと考えています。
発信面では、引き続き日経クロステックや日経産業新聞への寄稿を続けておりますが、それに加えて週次でのFintechニュースを解説するポッドキャストを始めました。ぜひまだの方はご登録ください。近年、自分自身のインプットはどんどん目から耳へと移行しており、海外の難しい本や、専門事情のニュアンスなども、基本的には耳から得ているような所があります。
また、耳インプットの関連では深井さんの番組に出させて頂くなど、ありがたい機会もいただきました。金融が専門分野ではありますが、その定義が非金融化している中で、このような発信のあり方を2023年以降も模索していこうと思っています。
最後に恒例の読書紹介ですが、今年は(やや)専門外で視野が広がった編です。
スタートアップの経済学
ありそうでなかった、スタートアップ経済圏を網羅的に取り上げた教科書。世の中の起業関連コンテンツがハイグロースなベンチャーに偏りを持っている中で、視点を平準化し、起業について本来どうあるべきかの原点に戻れる重要な一冊。政府のスタートアップ振興が本格化する中での道しるべとして必読。
歴史学者という病
深井さんの関連で知った著者が、内容が終始歴史学のあり方なのに、グイグイと惹きつけて読ませる一冊。コテンラジオさんでもよく出てくる話ですが、世の中で起きることをいくら勉強しても分からないことや、整理できること、その中でどう世界を理解したいか、といった観点を一個人のクロニクルを通じて味わえる。
この部屋から東京タワーは永遠に見えない
虚無と分断の深まる年に私たちは分断の本質をちゃんと見ていただろうか、ということをこの本を通じて思いました。分断の断面、切れ目の叫びのような要素をすくい上げ、蒸留したような何かは、例えば英国や米国の出来事だと思っていた要素が、確実に日本(題材的には港区でも)にもあるだけでなく、最近に始まったことではないことを複層的に教えてくれます。と同時に、様々な意味で成長をする、ということの意味を感じさせてくれる一冊でした。
それでは、新年もどうぞよろしくお願いします。