育児給付金シミュレーターが育児世帯を楽にする

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2022年4月に厚生労働省により公的年金シミュレーターが導入され、ねんきん定期便に搭載されたQRコードをスマホから読み込むだけで将来の年金受給額が確認できるようになりました。2023年以降は民間アプリにも搭載できるようにするべく、現在実証実験が進められています。

四書五経の礼記には、国家財政の心得として「入るを量りて出ずるを為す」という言葉が書かれています。収入を正確に把握した上で、その枠内で支出計画を立てなさいという意味なのですが、これは国家財政に限らず、企業経営や家計管理などあらゆる場面における財務管理の基本です。公的年金シミュレーターの導入によって、将来の年金受給額を簡単に把握できるようになり、住宅ローン計画や生命保険の見直しなど各家庭における長期の支出計画が立てやすくなるでしょう。

一方で育児に対する補助はというと、少子化が止まらない中で、育児世帯に対する国家の支出額は増加傾向にあります。ところが、その補助の中身は、世帯年収、居住している自治体、家族構成、利用しているサービスなど様々な条件によって異なる上、毎月ではなく隔月での支給になるため、各家庭が合計で毎月いくら受け取ることができるのか、全体像を把握することは容易ではありません。

例えば、夫婦共働き、世帯年収1,000万円、5歳児(幼稚園)と1歳児(保育園)がいる、という前提で計算すると東京都世田谷区の場合は下記のようになります。

保育園保育料幼稚園入園補助金幼稚園保育料補助幼稚園副食費幼稚園預かり保育
月▲45,500円90,000円月29,500円月4,500円月11,300円

これに対して、東京都目黒区では下記のようになります。

保育園保育料幼稚園入園補助金幼稚園施設利用料給付幼稚園保育料補助金
(施設費、教材費、冷暖房費等)
預かり保育
月▲33,400円60,000円月25,700円月11,800円月11,300円

※筆者調べ。なお、第二子に係る保育料は来年度以降東京都において無償化される見込み。上記はあくまで幼稚園及び保育園に係る補助金であり、その他にも例えば、目黒区ではベビーシッター利用に対して2,500円/時の補助があるのに対し、世田谷区には該当制度はないなど、育児給付は自治体毎に大きく差がある。

これらの金額は前述した通り、世帯年収や子供の数、年齢、居住自治体など様々な要件で変動するため、同じ世帯であっても翌年には受給できる金額が異なるということが普通に発生します。もちろん各自治体は育児に対する補助制度を公表しているので、居住自治体の制度を綿密に調べ、計算すれば自身が受け取れる補助金額の合計を知ることはできますが、その時間を取ることのできる育児世帯は多くないでしょう。ほとんどの世帯では、一年間経過して貰った金額を計算してみて、ようやく全体像を知るというのが現状ではないでしょうか。

育児に対する補助がどのくらい受けられるのかということは、家庭の支出計画だけではなく、居住自治体の選択や働き方の選択など様々な意思決定に影響します。一部の自治体については、保育料の見込み額を計算してくれるシミュレーションサイトがあるようです。これをもっと広げ、世帯年収、居住自治体、家族構成などを入力するだけで各家庭が受給できる育児支援給付が一覧となって出てくるような「育児給付金シミュレーター」の導入を、働く親の一人として、ぜひ行政の皆様に検討いただきたいと思っています。

忙しい育児世帯が、簡単に将来にわたる受給額を把握できるだけでなく、想像以上に各自治体が育児支援に力を入れて取り組んでいることを一覧でき、行政への理解が深まることにもなるのではないでしょうか。

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