米国金融大手がUX名門Adaptive Pathを買収

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先週、米国の金融大手キャピタル・ワンが、UXの世界での専門コンサル会社であるAdaptive Pathを買収しました。

Adaptive PathはUXの世界での超名門プレーヤーであり、その直接の仕事のみならず、開催するカンファレンスや、UXに関する考え方も強い影響力を持ってきました。顧客のラインナップも、TwitterやAirbnb、Flickrなど錚々たる名前が上がります。

一方で、キャピタル・ワンは1994年に創業された金融グループです。

同社は1990年代にクレジットカードの世界で、VISAやマスターカードといったビッグネームが並ぶ中、統計面での新しいアプローチを展開することで拡大してきました。また、2000年代半ばからは複数の地方銀行を買収することで、銀行としてのプレゼンスも拡大しています。

キャピタル・ワンは顧客に向けて、常に新しいアプローチを重視していることでも有名です。自ら金融産業に革新をもたらすためのインキュベーターも展開し、開発用のAPIを提供しています。また、最近も自らApple Payに対応したアプリをリリースしています。

なぜ、キャピタル・ワンのような金融大手が、Adaptive Pathの買収という道を選んだのか。

その背景は、Adaptive Path側のCEOは同社のブログの中の文言にあらわれています。

(以下筆者意訳)

自分たちの創業期のアイデアは、UXデザインという、「誰も知らないサービス」を売ることだった。それは、説明するときにも明瞭でもなく、価値すら信じ難いものであるかもしれない。ただ、この思いを持って、事業を発展させてきた。 (中略) これまでも、沢山の買収のオファーを受けてきたが、その中で、自分たちのデザイナーのみでなく、プログラムマネジメント能力や、サポート部署のパワーまでを評価してくれた者がいなかった。
(中略)
私達は買収されるのであれば、知的好奇心やデザインに向けた理解と、組織として動き続けて欲しいという思いを評価してくれる会社がよかった。初めてその要件を、しっかりと満たしていたのがキャピタル・ワンだった。自分から見ても、まさか金融機関に買収される日がくるとは思っていなかった。しかし、キャピタル・ワンは人間を中心としたデザイン設計を大事にし、コンサルティングの仕事としても、この15年の経験の中で、間違いなく最高の顧客の一人だった。彼らは組織としてもデジタルプロダクトのデザインや、デザイン思考、調査・研究において優れた仕組みを有しており、すさまじく優秀な人たちを採用している。

新しいサービスや、そもそものカード・銀行業が提供するUXの改良に関し、専門会社のパワーがついに必要になるフェーズが来た、といえるのかもしれません。

金融の世界では、信用力や規制、データ利用の敷居の高さから往々にして動きが遅く、銀行やカードといった、王道的な分野でのビジネスでは技術革新が起きづらい特性が見られてきました。

しかし、キャピタル・ワンやマスターカード、ラボバンクのような大きな顧客基盤とAPIを提供するプレーヤーや、Yodlee、Intuitといったアカウント・アグリゲーション機能の提供者が出てきたことで、Fintechの業界では新たなビジネスを起こせる余地が拡大してきています。

今回の買収は、従来の大型プレーヤーが、金融業界の「使い勝手」を変えていく、大きなきっかけとなるかもしれません。

Picture from Adaptive Path

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