
英国のFintech産業を代表する団体Innovate Financeは7月30日、2020年に向けた政策マニフェストを公表しました。
Innovate Financeのマニフェスト
過去のブログでも取り上げたように、ロンドンはFintechの振興を金融領域における競争政策の一貫として推進しています。
そのような中でInnovate Financeは昨年120億ドルまで増加したFintech投資額が、2020年には更に460億ドルにまで拡大する予測を取り上げています。
英国におけるFintech投資額は現在年間6.23億ドルですが、Innovate Financeは今後、ロンドンが欧州におけるFintechハブとなることで、追加的に、ベンチャー投資の領域で40億ドル、金融機関からの投資で更に40億ドルを集めることを予定しています。
また、英国では現状13.5万人がFintech領域において雇用されていると見ていますが、2020年までに追加的に10万人の雇用を創出することを目標としています。
Innovate Financeは具体的な施策として、ベンチャー向けの投資減税を更に活用していくことなどを述べています。英国ではSEIS(The Seed Enterprise Investment Scheme)と呼ばれる、エンジェル投資への所得控除・税優遇策があり、この制度の更なる活用を促していくとのこと。その結果として、ロンドンのみでなく、リーズやエジンバラ、マンチェスターといった英国の地方都市でも多くのFintechベンチャーが生まれることを企図しています。
また、創業支援のみでなく、現状2社(TransferWiseとFunding Circle)に留まっているユニコーンクラブのベンチャーをより増やしていくことも掲げています。マニフェストにおいては、2020年までに25社の巨大Fintechリーダーを生み出すことを目的としています。
Fintechでのトップ外交も
現在、東南アジアに赴いている英国のキャメロン首相は、英国の様々なFintech企業のリーダーと共に、インドネシアでFintechのラウンドテーブルを開催しました。
首相が帯同する形でのFintech外交を続けることで、英国は現在のポジションをより確固たるものとしようとする姿勢が明確です。
さらに、今月発表された英国財務省の産業生産性向上のためのイニシアチブでは、Fintech領域での「Fintech大使」として、この領域では有名なベンチャー・キャピタルPassion Capitalをパートナーに選任しています。彼女は、「英国のベンチャーキャピタルの女王」とも呼ばれる存在であり、今後この目線での政策を更に推進していく予定です。
同イニシアチブでは他にも、監督官庁に銀行の新規参入を促す特別ユニットを設置するなど、これまでに無いレベルで金融の新規プレーヤー参入を促しています。
国策としてのFintech
Fintechは日本も含めて、多くの文脈で、金融産業における顧客満足度の向上や、途上国での効率的なインフラ普及という目線で語られてきました。
しかし、昨年以降の英国の政策的な流れやトップ外交の現状を見ると、その政策的な位置づけは、個別産業の政策という観点から、国策の一つに繰り上がった印象を受けます。
とりわけ、雇用数の増大というわかりやすい指標が掲げ上げられたことは、金融立国であるという英国のスタンスを割り引いても、大きな変化ということができそうです。
今後、英国で更にどのようなイニシアチブが生まれてくるのかが、また、他国がどのように追随していくかが、引き続き注目されます。