良いお年をお迎えください

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今年も大変お世話になりました。

本年は研究所に新卒社員が二名加わる中で、次世代的な実験や調査を複数進めることができたのが成果でした。

当ブログでは合江さんを主たる執筆者として、主に銀行制度や金融仲介のあり方の未来像について、海外イシューを取り上げることができました。翻訳中ですが、BOEのFuture of Financeは示唆に富んだ、冬休みの必読レポートだと思います。

また、サービスを通じた検証として、複数の金融機関様と「超高齢化社会における金融」をテーマとした実証実験であったり、今後のあり方を実務的に議論する場をFIN/SUMCOLTEMで展開することができました。こちらは新卒で入社いただいた辻さんの尽力あってのものでした。

この二つのアジェンダにやや共通するのは、言い古されてきたことでもありますが、著しい人口動態変化や低成長が、制度の想定する幅を越えて進む中で、金融機能がそこに巻き込まれ、戦術的な対応をするだけでは限界を迎えかねない現実です。

決済に関連すれば、国内銀行業務の収益性がマクロ経済要因により大いに制約される中で、例えば決済や情報のあり方に関して、次世代のインフラに向けた投資が減りゆく原資に依存して続いている問題意識があります。

また、高齢社会における資産形成のあり方が話題になったように、高齢者がマジョリティ化する金融の中での代理行為や、高齢者の本人認証のあり方などは、本格的な安心が見える制度的議論がもっと必要だと感じています。

海外の方と会話をすると、特に欧州はジャパナイゼーションが進んでおり、そのトレンドが東アジアなどにも波及してくる期待値がある以上、この独特な日本の閉塞感はいずれ世界的なトレンドにもなるものと思います。この研究所の使命は、一見トレードオフだと思われている金融制度の問題に、新たな均衡点を技術の観点から見出すことだと考えていますので、不遜ながら世界を背負った提言をしなければならないとも考えています。そのような観点で精進を続けてまいりますので、変わらぬご支援を賜れますと幸いです。

今年読んでよかった本

各所で書いていますが、今年はAudibleに徹底的にお世話になりました。金融とは少し離れてしまいますが、下記の3冊は自分の感性と考え方に大きな影響を与えたなと思います。冬休みに、BOEレポートと一緒にぜひ。

Gladwellの筆力の真骨頂といえるこの一冊は、最後に凄まじい大団円を迎えるのですが、私たちが営業力だったりソフトスキルだと考えているものに対して、一石を投じるものといえます。人間は対面的に会うときに何を感じるようにできているのか、ダニエル・カーネマンの議論でもよくあるように、混乱の多い時代だからこそ、感情と論理の区別を大事にして、ファクトフルな意思決定をしていきたいととても感じました。

天才の頭の中が話題になったように、ビル&メリンダ・ゲイツ財団は世界を救う一大活動を進めていますが、その裏側で自らを変貌させただけでなく、本当の現場主義を体得されたメリンダ・ゲイツさんの自伝は、権利のあり方を根本から見直すきっかけとなりました。ジェンダーギャップの議論が、お題目のように言われるのではなく、社会の根本的なボトルネックである認識が生まれる中で、例えばリブラ財団においても関連する財団が寄付者に含まれていることが、それまでとは異なる理解を自分にもたらしていることに気付かされました。社会課題に対しては批判よりも提案を行っていく義務が、私たちにはあります。

ビル・キャンベルのコーチング、というだけではない、最近忘れられている「人間としての包容力」が全編に溢れる本でした。個人的に2010年頃に留学中、コーチングを行う側としてのトレーニングを半年ほど受けたことを思い出す中で、コーチングはスキルではなく、努力によっていかようにでも高められることを、久しぶりに思い出しました。良いリーダー像は人それぞれであると言われますが、「自分の中のビル・キャンベル」とは誰かを理解することは、善い人となっていく中で意味ある資産になるのだなと思います(和訳もあります)。

それでは良いお年をお迎えください。

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