米Square子会社銀行の認可承認

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket

米国の店舗決済大手Squareは2020年3月18日付のリリースで、米国FDIC(連邦預金保険公社)が同社の産業用ローン分類の銀行免許を取得することにつき、条件付きの承認を行ったことと、ユタ州の金融当局からも免許の承認を受けたことを発表しています。

以前も本ブログで見てきたように、Squareは自社で融資サービスSquare Capitalを提供する際に、ユタ州の銀行をバックボーンとして活用してきました。融資案件が増える中で、一義的には自社で融資組成の機能を持つことが合理化につながる判断があったことが考えられます。新たな銀行会社であるSquare Financial Services は1年以内に開業予定で、Square Capitalの融資サービス専業の機関となる見込みです。

産業用ローン(ILC)型免許は、関係会社との取引を制約することで機関銀行化を防ぎつつ、複数州での営業が可能な制度です。ILCの制度では、要求払い預金の提供が禁じられ、総資産が1億ドル未満であることなど、強い制約が課されています。そのため、Squareの子会社の場合には基本的に貸出債権が売却されるアプローチが取られることとなります。Squareのプレスリリースでも、今後とも第三者の投資家にローンを売却する形は変わらず、バランスシート及び収支への影響は軽微とされています。

ILC型銀行は、過去にはトヨタやBMW、ハーレーダビッドソンなどにより、オートローンの提供を目途としても活用されてきました。しかし、2005年のウォルマート社への認可が承認されなかったことを境にその活用は低迷していました。 Squareと同日に、学生ローンを提供するNelnet社の申請も認められた中、 今後事例が増えていくのかは注目されます。同州では楽天も同様の申請を昨年7月に行っていることを発表しています。

この制度のあり方については別途、認可前日の17日に、FDICから別のリリースが出ており、ノンバンクによるILC型銀行の保有について、親会社からの資本面及び流動性面でのサポートを行えることと、報告体制を具備することで、より認可を促進する方向性につき、60日間のパブリックコメントを求めています。リリース内のコメントでは、親会社が子会社銀行の信用を実質的に補完することを明文化することが、預金保険制度の透明性や安定的な運用を可能とする旨が述べられています。この議論の反対側には、2019年3月には銀行業界が消費者不安やシステミックな懸念を背景に、健全性への危惧を提言していることがあり、今回も同様の反論が行われることが予想されます。ただ、事業会社と銀行の境界線については、どの国でも制度の存立的な問いとなりますが、昨年のBOEレポートの分析にもあるように、銀行機能のアンバンドリング・専業化が進む中で、ILCがその先鋒として新たな制度を形成できるか、注目されるところでもあります。

Squareは今回の発表と共に、銀行サービスに向けたサイトを作成しています。そこでは同社がこれまでもスモールビジネスの成功をミッションとしてきた中、ILCの枠に囚われない勢いで、スモールビジネス専用の銀行を形成していくメッセージが記載されています。

Square was started to help small businesses succeed.
Now, we’re taking that mission further. We’re designing a new kind of bank, made specifically for small businesses.

https://squareup.com/us/en/whats-new

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket

SNSでもご購読できます。