米国の緊急経済対策に伴う米フィンテック企業の取組

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新型コロナウイルスが及ぼす経済的ショックの軽減のため、米国政府は3月27日に、「コロナウイルス支援・救済・経済保障法(CARES法)」を成立させ、消費者への支援として年収75,000ドル未満の成人1人につき1,200ドル、子供1人につき500ドルを給付する支援策を決定しています。

しかし給付の実行には時間がかかり、約2~3週間を要するとされている中で、この期間を縮小しようとするフィンテック企業の取り組みがみられています。

Chime社はランダム抽出した顧客にローンを提供

アメリカのネオバンクChimeは個人向け融資の早期提供に向けて取り組んでいます。Chimeは一定の基準を満たす顧客をランダムに抽出し、政府の給付が完了するまでの間に1200ドルを融資すると発表しています。

Chimeは2013年設立のカリフォルニアに拠点を置くネオバンクであり、決済口座の開設や当座貸越サービス “Spot Me”を提供、500万人に利用されています。顧客は給与受取日までの間に最大100ドルの当座貸越を利用することができます。当座貸越と口座維持の手数料は無料となっており、米国でいわゆるHidden Fee(隠れた手数料)と呼ばれる費用を徴収される恐れがないサービスとして、支持されてきました。

また、当座貸越分の返済後は、アカウントに前払いで資金を入れておくことが出来る機能も備えています。同社は銀行免許を取得しておらず、 “The Bancorp Bank”(ミネソタ州)、”Stride Bank”(オクラホマ州)の銀行基盤を用いてサービスを提供しています。

(引用: Chime公式サイト)

今回の給付支援策に対する取組について、Chime社は「今回ランダムに選ばれた顧客は、政府からの給付よりも2~3週間早く資金を受けられることで、Chimeが発行するプリペイドカードによって食料品など日常の支払いに充てることができる」と述べています。

政府へのローン申請時にKabbageのインフラを提供

米政府は中小企業支援として、雇用維持を目的とする信用保証制度 “Paycheck Protection Program”を構築しています。SBA(米国中小企業庁)が企業の借り入れローンを100%(財政規模3,490億ドル)の信用保証として供与し、事業側は給与を授業員に支払うことで債務が免除されるという内容になっています。

元SBA長官のカレン・ミルズ氏は、中小企業の資金が不足する事態に対し「銀行、フィンテック企業、財務省、中小企業庁がどのように機能するかにかかっている」と述べており、その中でもフィンテック企業は融資プロセスを迅速に行うことができるとForbesは報じています

以前ブログでもご紹介したKabbageは、SBAが認定する金融機関と連携し、給与保護プログラムであるローン申請のインフラを提供しています。ローンの申請手続きを金融機関だけで対応することが物理的に難しい中、Kabbageのコーポレートサイトから申請し、企業情報などの必要事項を入力することで、同社での限度額である最大200万ドルまでの融資枠で借入可能な金額が算出されます。ローンの申請方法の案内やサポートデスクを設けるなどのサポートを行っています

(Paycheck Protection Program申込画面: Kabbage公式サイト引用)

KabbageのCEOであるロブ・フローヴァイン氏はAP通信のインタビューに対し「米国の中小企業は大きな打撃を受けながらも必要とされている。パートナーである銀行とともに、我々は精力的にサポートしていく」と述べており、同社が得意とする融資申請の分析や検証技術を活用した取組として注目されています。

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