ゲスト対談: スコアリングによる新しい信用創造~前編~(LINE Credit株式会社 川崎 龍吾さん)

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「マネーフォワード Fintech研究所長 瀧の対談シリーズ」の第4回目をお届けします。今回は、信用スコアリングをテーマに、LINE Credit株式会社の川崎 龍吾さんをゲストにお迎えした対談を前後編に分けてお送りします。

今回のゲスト: LINE Credit株式会社 川崎龍吾さん

2015年10月 LINE株式会社に新卒として入社。アルバイト求人情報サービス「LINEバイト」の企画を担当。
2017年10月 金融事業立ち上げ (現LINE Financial株式会社)プロジェクトに参画。
2018年5月 LINE Credit株式会社 新設。プロダクト企画統括に就任。
2019年6月 スコアリングサービス「LINEスコア」リリース。同年8月に個人向け少額ローンサービス「LINEポケットマネー」をリリースし、現在、両事業のProduct Managerを務める。

はじめに

(※以下、敬称略)

瀧)本日はお時間をいただきありがとうございます。

川崎)ありがとうございます。よろしくお願いいたします。

海外でのインターンを経てLINEへ

瀧)はじめに、川崎さんの生い立ちやご経歴についてお伺いできますか。

川崎)私は大学卒業後、新卒としてLINEに入社しました。社会人になるまでの2年間は、アジアの新興国のスタートアップでインターンをしており、現地の方と2人で求人情報サイトを作っていました。その国は民主化して間もなく、携帯電話の普及率をこれから上げていくというタイミングだったこともあり、求人データベースの作製を中心に従事していました。

瀧)なるほど、川崎さんはLINE入社後、「LINEバイト」の企画もされた経験があると聞いています。つまり、国内のみならず、海外の求人系のお仕事もされていたのですね。実際にサービスやアプリを制作されている中で、どのような発見があったのでしょうか。

川崎)私のアルバイトに対する原体験は、大学に入学する直前の春休みに最初に始めた派遣型のアルバイトでした。採用の申込みや面接日の調整など全てが初めてで、派遣会社に電話をかける際にとても緊張したんです。

その体験から「LINEバイト」では、求職者が求人に応募すると、採用担当者のLINE公式アカウントが友だち追加され、面接日程などの調整をLINE上でやりとりできる仕組みをチームの一員として導入し、強化しました。これにより応募する際の過度な緊張感を取り除き、使い慣れたツールを使うことで当事者間の距離を近づけ、採用プロセスが簡便化されたというのは良い発見だったと思っています。

瀧)その電話への緊張感はとても共感します。私も高校生時代、ファミリーレストランや引越しのアルバイトを申し込む時、とても緊張したのを今でも覚えています。当時は当日支給のアルバイトはとてもありがたかったのですが、所得税とかも知らなかったので受け取れる給与が時給✕時間ではなかったことに驚いたりしていました(笑)。

川崎)お金に余裕がない若い時は、日雇いで当日報酬を受け取れるアルバイトを探しますよね。そんな経緯で「LINEバイト」に携わった後は、2017年の年末頃にLINEで金融部門を新設する計画が立ち上がり、そちらに異動後、金融サービスの調査と具体的なサービスの企画をすることになりました。

瀧)当時、ペイメント関連以外にもスケールの大きなサービスをリリースされていたので、とても驚いた記憶があります。

川崎)そうですね。最初の頃は、瀧さんが共著されている『Fintech入門』を初めて読んで、Fintechは何ぞやというところから勉強しました。

「LINEスコア」について

瀧)本日お伺いしたかった内容のメインでもあるのですが、貴社で提供されているスコアリングサービスについてお聞かせいただけますか。

川崎)はい、これまでの信用情報は、指定信用情報機関に蓄積されていたものの、ユーザーは自身で気軽にデータを照会することはできず、ユーザーが自身の信用情報の詳細を把握することが難しいという課題がありました。

また与信分野では、以前から信用スコアリングという手段は用いられてきましたが、従来は金融機関との取引履歴や年収、職務先など属人的なデータに基づいて構築される傾向が強かったと思います。一方で、私達はLINEのサービス上に蓄積されている行動データに基づき、独自のアプローチで信用力を推し量れないかと考えました。構想に約1年かけ、2019年6月に「LINEスコア」をリリースしています。

瀧)とても面白いお話ですよね。米国では、融資において人種や家族形態による差別が行われないように、スコアが発展してきたという一つの背景があります。一方、日本では、AIが信用スコアを算定する際に何が差別にあたるのかという議論はまだ黎明期です。これから多くが発展していく中で、信用スコアリングはそのバランスと、精緻化を図っていく面白い領域だと思っています。

スコアリングの基準となる要素

瀧)改めて、どのようなサービス提供をされているのですか。

川崎)「LINEスコア」を応用したサービスとして代表的なのが「LINEポケットマネー」という少額の個人向けローンサービスです。サービスの最大の特徴が、スコアの点数に応じて貸付利率(実質年率)やご利用可能額が決定するという点です。一般的なカードローンは利用枠が大きければ金利が下がり、小さければ金利は上がるような商品性になっていることが多いと思いますが、「LINEポケットマネー」では利用枠の大小は関係なく、スコアによって条件を定めています。

瀧)それって大きなポイントですよね。例えば少額を借りたい場合や、金利が低いのであればもう少し余裕を持って借りられるという事にもつながりますよね。ローンが少額の場合は少し高い固定金利にしなければならないというのは、制度の大きな課題だと思います。その点で、スコアに応じた金利というのはこれまでとは違う視点ですね。

川崎)そうですね。いわゆる一般的な与信との違いですと、雇用形態や職場の従業員規模、勤続年数などの画一的な情報に偏ることなく、LINEサービス上でのデータを軸にして判断することで、日々の行動や振る舞いなど、個人に焦点を当てた評価を行っています。

例えば、日本貸金業協会が発表している統計では、全ローンサービスにおける非正規雇用の利用者が全体の26%を占めていますが、我々のサービスは37%程度となっています。雇用形態などに過度に左右されることなく、多様な働き方をする個人にとってもフェアなサービスが提供できている傾向にあると自負しています。
(※日本貸金業協会ホームページ『貸金業者の経営実態等に関する調査結果報告』

瀧)ちなみに、何をするとスコアが変動するのですか。例えばLINEのトークで酷い内容を発言すると下がるのでしょうか(笑)。

川崎)(笑)。まず、前提としてメッセージの中身や通話の内容は、電気通信事業法に規定される「通信の秘密」に該当します。中身は暗号化されて処理が行われているので、社内でも該当データの閲覧自体は一切できませんし、判断材料には使えないようになっています。

一方で、友だちの数の増減やコミュニケーションの仕方が、延滞や貸倒れの発生確率と高い相関関係があるということが、この1年間でわかってきました。「一年前に比べて友だちが多ければいいのか」「どのようなコミュニケーション頻度をとっていればプラスの評価をされるのか」といったような詳細は申し上げられないのですが、ソーシャルグラフが関係するということですね。

瀧)その相関関係はすごく面白いですし、興味深いです。

川崎)そうなんです。非金融領域の行動データが信用スコアリングに十分活用できるということに驚きました。

「LINEサービスならではのユニークな変数を用いて、信用度の測定が高精度で算定できる可能性がある」というのがこの一年間の成果と感じており、これまでにはなかった新しい取り組みになったと思っています。

瀧)「通信の秘密」の内容でスコアリングされるのではないかという懐疑論もありそうですが、そうではなくストレートな測定なのですね。

インドでは、ユーザーの携帯電話の機種をスコアリングの要素として取り入れているサービスがあります。これはiPhoneを持っている人は経済的に余裕があるという判断があると思うのですが、どこまでビヘイビアを用いるのかはとても繊細なテーマですよね。

例えば、深夜3時にメッセージをしている人を判断する要素もあるのですか。

川崎)いつアクティブに使っているのかも判断材料のひとつになり、説明力の強い一つの行動データであるということはわかっています。ただ、機械学習で変数を絞り込んでいくので、作り手の個人的な思想によって格付けをするのではなく、システマティックに定義しています。なので、一見すると「どうしてそんな関係がなさそうな変数を使っているの?」となるような、意外な行動データも選ばれています。

瀧)そうですね。作り手の恣意的な要素が入っている限り、フェアネスな世界に陰りが見えると思います。御社はその点もちゃんと差配されていますし、機械にさせることで人間の思想が介入しないというのは重要ですね。

~前半の記事はここまでです~

今回はLINE Credit株式会社 川崎 龍吾さんとの対談記事の前半をお送りいたしました。後半ではレンディングサービスのニーズの変化や、「LINEスコア」が目指されている世界観、10年後の信用スコアサービスなどについてお送りしたいと考えております。後編につきましても近日中に公開予定ですのでお読みいただけますと幸いです。

また、本対談はLINEスコア/LINEポケットマネーの公式noteでもお読みいただけます。
LINEスコア/LINEポケットマネー公式note

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