英国で黒字化達成したチャレンジャーバンク

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英国のチャレンジャーバンクである “Starling bank”が2020年度において、年間で初の黒字化を達成する見込みであると同社のプレスリリースで発表しています

Starling Bankはオンライン預金口座、入出金管理を可能とするアプリケーションおよびデビットカードを発行するチャレンジャーバンクです。同社が提供する預金口座は、口座維持手数料が無料である他、同行内での無料のアカウント間送金や銀行間送金、無料のATM引き出しなどを提供しています。2020年10月時点の預金量は40億ポンド(約5,600億円)でこれまでに約180万の口座を開設するなど英国内で急激に成長している銀行と言えます。

(画像:Starling Bank公式サイト及び公式IR資料より引用)

創業者兼CEOのAnne Bodin氏は「2020年10月単月の営業収益は80万ポンド(約1億1,000万円)、年間の収益は約900万ポンド(約13億円)の黒字化を達成した」と述べています。Starling Bankの収益内訳は利息収入が550万ポンド、手数料収入が350万ポンドでしたが、これら2項目は前年度の同月比較でいずれも3~4倍近くに伸びています。2019年と2020年の10月単月を比較すると、営業経費(620万ポンド⇒810万ポンド)は一定に収まった一方で、収益の成長が著しいことが黒字化に大きく寄与しています。Bodin氏は「今後はヨーロッパ全土に提供拡大し、欧州市場全体での競争を展開する」と意欲を見せています。

英国の他の著名なチャレンジャーバンクとしては、スタートアップや中小企業へのオンライン融資を提供するOakNorthや、預金口座とそれに紐付けられた決済カードを発行するMonzoなどがあります。Monzoは2020年12月の調達で前回の20億ドルから12億ドルのダウンラウンドで調達していることから、チャレンジャーバンク競争において苦戦を強いられている様子が伺えます。一方で、OakNorthは2019年2月にソフトバンクなどから4億4,000万ドルを調達しており、最近では2020年11月に三井住友銀行から3,000万ドルの出資を受けていますが、以前ブログでもご紹介したように同社も2018年に英国のチャレンジャーバンク初の黒字化を達成しており、Starling BankはOakNorthに続く2例目として注目されています。

英国でチャレンジャーバンクが2010年のメトロバンクの誕生を皮切りに生まれてきた中、その評価が徐々に可能な時期へと入り始めたといえます。当初はサステイナブルな経営が危惧された同制度においても、このような勝ち組のケースが、中小企業向け融資だけでなく、個人向けサービスにおいても生まれていることは大きなニュースであり、さらに続くケースが生まれるかが注目されます。

参考文献:瀧俊雄『台頭するチャレンジャーバンクの衝撃』「週刊金融財政事情」2018年5月28日号

(※アイキャッチ画像はStarling Bank公式サイトより引用)

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