SPACによる上場を目指すSoFi

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2021年1月7日、米オンライン貸し手のSoFiは上場株式会社形態のビークルである “Social Capital Hedosophia”からの買収により、SPAC(Special purpose acquisition company: 特別買収目的会社)によって上場する計画を発表しています

SoFiは米国で学生ローンの借り換えサービスなどを提供するチャレンジャーバンクとして、累計で200万人以上に利用されています。同社のローン商品はビッグデータに基づき、より有利な利率で借り換えが可能という点を特徴としています(注)。

SPACとは、IPOによって資金調達を行い、調達資金を事後的に未公開企業の買収に用いる旨の設定を行う株式会社形態のビークルを指します。IPO時点ではこの企業の実態はなく、事後的に運営者が買収に関する事項を決定するため、「ブランク・チェック・カンパニー」と呼ばれています。

同社の発表によると、2020年10月に行われた “Social Capital Hedosophia”(以下SCH)のIPOによって調達した約8億500万ドルを含めた24億ドルが買収後の法人に支払われる見込みです。その他にも、限定投資家に向けて株式募集の私募の方式であるPIPE(Private Investment in Public Equity)の形態により、SCHのCEOであるChamath Palihapitiya氏と英VC の“Hedosophia”が公開株1株につき10ドル(計12億ドル)の出資を行う見込みとのことです。

SCHのChamath Palihapitiya氏はFacebookの幹部やSlackの取締役などを歴任しており、今回の買収の発表に際し、「SoFiの他にも数社の買収の構想がある」と述べています。

SoFiは2019年2月に “SoFi Money”というP2P機能を付したデビットカードの発行のほか、SamsungやMastercardとの提携によって電子マネーの “Samsung Money by SoFi”を提供するなど、2019年以降は決済サービスにも進出しています。また、2020年10月にはミズーリ銀行のインフラを用い、Mastercardブランドでクレジットカードを発行すると発表しており、他にも住宅ローンやETFなど個人向けの取扱商品の拡充を行っています。

また、2019年4月に、人工知能や行動経済学を活用した米国の新興系保険会社である “Lemonade”と自動車保険の販売において提携を行うなど、近年はチャレンジャーバンクとしての業務以外にもサービスの幅を広げており、同社の金融プラットフォーマーへの進化に注目が集まっています。

(SoFiクレジットカード:SoFi公式サイトより引用)

消費者向けサービス以外では、2020年4月にSoFiは銀行の預金口座や決済インフラを提供しているテック企業の “Galileo”を12億ドルで買収しています。”Galileo”はMonzoやChimeなどデジタルバンク向けの銀行インフラの提供を行っている知見を活かし、B2B領域に進出しています。

SoFiの銀行免許取得については、昨年7月にOCC(米通貨金融庁)に対し国法銀行免許(national bank charter)の申請を行ったことは当ブログでもご紹介しました。その後、昨年10月にOCCはSoFiに条件付きで “SoFi Bank”への国法銀行免許を付与しており、付与から3年間はOCCの監査を受けることとなります。本格的な銀行サービスは2021年から開始されるのではないかという見方もあり、2020年10月に発表されたクレジットカード発行は “SoFi bank”の設立に向けた取り組みではないかとの見解もあります。

学生ローン以外の融資商品やデビットカード及びクレジットカードの発行をはじめ、国法銀行免許の取得によって預金口座の開設が可能となるなど、更に利用者の金融体験を広げていくことが期待される中、上場により同社が今後どのような動きを見せるのか、動向が注目されます。

(注)SoFiの記事については、是非こちらもご覧ください。

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