ゲスト対談: 日本のファクタリングサービスのいま~後編~(マネーフォワードケッサイ株式会社 家田 明さん)

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「マネーフォワード Fintech研究所 瀧の対談シリーズ」の第10回の後編をお届けします。後編では、OFA JAPAN(オンライン型ファクタリング事業者連絡協議会)の設立の背景やこれからのファクタリングの未来像について、前編に引き続きマネーフォワードケッサイ株式会社 取締役会長の家田明さんにお話を伺った内容をお届けします。

※前編はこちらからご覧いただけます。

オンライン型ファクタリング事業者連絡協議会(OFA)の設立

(以下、敬称略)

瀧)

ファクタリングをオンラインで提供する事業者が中心となってオンライン型ファクタリング事業者連絡協議会(以下OFA)が設立され、家田さんは立ち上げから関わっておられます。この協議会の活動についてお聞かせください。

家田)

設立の背景としては、前編でもご紹介した通り、二者間ファクタリングは全て悪質であるという論調が一時期様々なところでみられた一方で、我々のような正規の事業者が提供する二者間ファクタリングは中小企業の資金調達の有益な手段となると考えていた企業も多く存在していました。

そこで、特にオンラインで正規のファクタリングサービスを提供する企業数社が集まり、業界として正しい情報を発信し、ファクタリングを巡る悪質な事例の紹介や事業者同士の情報共有の場として、OFAを2020年4月に設立しました。当社マネーフォワードケッサイも、設立時からの会員企業として参加しています。

設立後は関係官庁との連携やメディアの方に向けた勉強会、東京リスクマネジャー懇談会とFintech協会との共催セミナーなどを開催してきました。最近ではOFAのホームページを開設し、様々な情報共有や発信を行っています。

このような活動や裁判事例により、柔軟な理解を示していただける方も増えており、「二者間ファクタリング全てが悪質なサービスである、という見解は少なくなってきている」というのが現状であると考えています。

ファクタリングを利用する理由

瀧)

ありがとうございます。それでは、ユーザーの目線で中小企業等の事業者の方がマネーフォワードケッサイにファクタリングの利用を申し込まれる理由についてお聞かせください。

家田)

資金調達は一般的に、事業者にとって非常に労力を要する業務です。銀行などの金融機関に融資を申し込む場合には多くの書類を用意する必要がありますし、審査時に何度も面談をするなど、融資可否の結果が出るまでに一ヵ月以上を要する事例も少なくありません。そのため、急遽資金が必要になった場合には、金融機関の融資だけでは機動的に企業が必要資金の確保が困難なケースもあります。

一方でファクタリングを活用した場合には、売掛債権を売却することで資金調達を行うことから、融資と比較した場合には短期間で資金を確保することができる性質を持っています。そのため、企業の資金調達手段の主軸は金融機関からの融資であるが、いざという時の補完的な資金調達の手段としてファクタリングを利用するという活用方法もあるのではと考えています。

(対談の様子: 写真左が家田さん)

瀧)

初歩的な質問で恐縮ですが、銀行名に「ファクター」などの名称が付されている企業が提供しているファクタリングサービスとはどのような違いがあるのでしょうか。

家田)

基本的に銀行系のファクタリング企業は三者間ファクタリングを提供していることが多いようです。つまり、売掛債権を売却した事実を売掛先に知られても問題がないような大企業同士の取引を想定しているケースが多く、二者間ファクタリング業者とは少し異なるサービスになります。

メガバンク系のファクタリング企業は1970年代に次々と設立されました。しかし、同じグループの銀行が行う融資とバッティングするケースも度々見られたようで、融資を第一に考える傾向がある銀行の文化に影響を受けた結果、当時は一般に広がりづらかったという事情があるようです。

金融機関との協業によって実現すること

瀧)

大手の金融機関が、マネーフォワードケッサイなどのファクタリング事業者との提携が叶った理由についてお聞かせください。

家田)

一つは、二者間ファクタリングを直接ユーザーに提供してきたノウハウと実績を評価していただいたという点があると思っています。もう一つは、Fintech企業としてのファクタリング事業における今後の優位性に着目をしていただいたことが理由ではないかと考えています。

瀧)

本来は金融機関の方が金融に関する業務において圧倒的な実績がある一方で、事業の運用面においてはベンチャーや新興企業の方が得意な側面もあるのではと感じています。そこで、我々のような新興企業が信用力やプロジェクト全体を動かす力強さを持つ金融機関と提携をすることで、さらに様々な方にファクタリングをご活用いただけるのではと思います。

家田)

仰る通りです。金融機関の目線からファクタリングサービスを企業に提供することは大きく二つのメリットがあると考えています。

一つは、ファクタリングサービスを通じて既存の融資先との関係を強化できるという点です。金融機関の既存の融資先がとっさに資金が必要になった場合、同じ金融機関に追加融資を実行してもらうには時間も手間もかかってしまうという課題があり、資金が必要な企業は他の金融機関に融資を申込むなどの状況がみられていました。

そのような既存の融資先に対して、提携するファクタリング事業者が資金を提供できれば、金融機関は融資先を引き続きサポートすることが可能となり、結果として取引先との関係を強化することができるという利点があります。

もう一つは、将来性のある新たな取引先を見つけることができるという点です。これまで取引実績はないものの、将来性や成長可能性がある企業に対しファクタリングサービスを提供することで、その企業の資金調達をサポートすることができます。その上で、企業が成長した際に改めて融資を行うことで、融資先との関係強化やサービス向上に繋げることができると考えています。

瀧)

ファクタリングは、機動的かつ十分な信用力が担保されたニーズを満たす資金調達手段であると理解しています。一方で、将来的にオンラインレンディング技術や本人確認技術が急速に発展した世界では、別のサービスが同じニーズを満たすこともありうるのかなと思うのですが、どのようにお考えですか?

家田)

企業にとってファクタリングは「借入ではない」点が大きなメリットだと考えています。借入を増やしたくないと考える企業経営者が多い中で、ファクタリングはあくまで売掛債権を売却する仕組みですので、金融機関からの融資を受ける場合よりも心理的負担が軽減されるのではと考えています。

その点で、「オンライン型ファクタリング」という名称からも、今後はさらなるIT技術を活用した新たな取組みが評価される可能性もあると思います。

(対談の様子: 写真左が家田さん)

ファクタリングサービスの課題と目標

瀧)

最後に、ファクタリングの将来像やOFAにおける課題や理想についてお聞かせください。

家田)

二者間ファクタリングの市場は未だ黎明期にあります。加えて悪質な業者による被害も出ており、それによりファクタリングの利用を躊躇する企業も少なくないことが大きな課題です。しかし、正規の二者間ファクタリングのサービスは、企業にとって極めて有益な資金調達手段であることは間違いなく、そうしたファクタリングが普及すれば、中小企業等の事業者の資金繰りは改善されると考えています。

そのため、OFAでは引き続きこの二者間ファクタリングの有益性をきちんと認識していただけるよう、様々な情報発信や啓蒙活動を行うとともに、官公庁を中心とした関係機関ともコミュニケーションを取りながら市場の健全な形での発展に向けて取り組んでいきたいと考えています。

瀧)

仰る通りですね。ファクタリングは一般的に少額の資金調達手段であると言われることも多いですが、私は「少額」という表現はどこか供給者視点の表現に思えてしまい、適切ではないと常々思っています。企業の資金需要に関する課題が金融サービスやFintechが解決すべき一つのテーマである中で、もっと業界全体で安心して利用できる正しいファクタリングの存在感を打ち出していけたらいいなと思います。

家田)

はい、正しい形で多くの中小企業の皆様に知っていただく必要があるというのがもう一つの課題であり、今後の目標だと考えてます。

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