本年も大変お世話になりました。
今年は規制改革推進会議の専門委員や、東京都の国際金融アドバイザーなど、身に余る立場での公的な仕事を拝命しました。これまでのFintechやクラウドといった、まだ専門と言えた領域だけでなく、社会全体のデジタル化や、包摂性を伴ったインフラの提供といったテーマで僭越ながら意見・発信をさせていただくことが増えました。また、2月よりサステナビリティ担当の職務も拝命し、こちらも手探りな中で、マネーフォワードらしい、社会への責任について試行錯誤する毎日です。
恒例の読書録ですが、今年は以下の3冊を上げたいと思います。
今年読んでよかった本
『地球の未来のため僕が決断したこと 気候大災害は防げる』
ビル ゲイツ (著), 山田 文 (翻訳)
タイトルに若干異論がありますが、ものすごく的確に、我々が日ごろ気軽に脱炭素と述べているものの意思決定上の難しさと、それでもなお希望を捨てずに向き合うための情報が詰まっています。Netflixの番組とセットで、今後の共通言語となる知識を取り入れた上で、議論をしていきたい一冊です。
サステナビリティに関連して、例えばマネーフォワード社も、個人や法人に帳簿を提供する観点で、CO2の計測であったり、人々のナッジやグリーンファイナンスに向けた貢献可能性について、様々なご期待があるのも事実です。このような活動は総じて総花的に何でもやりたい、となりがちな中で、本書はそこで優先順位をインパクトの大きさや実現可能性に応じてつけていくことのメッセージが色濃いです。
『嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか』
鈴木 忠平 (著)
著者の鈴木さんは様々なアスリートに生身で向き合う、本当に素敵な方です。記者として駆け出しだったころの監督との邂逅から、個別の選手の内面に至る洞察まで、スリルと現実感と、むき出しの成功欲求が重なる、本当にすごい一冊。
敢えて本ブログをご覧の皆様に読んでいただきたい理由は、そのむき出しの人間像に対してバランスを取っていく監督のマネジメントスタイル。中ではほかの監督との比較感も多分に出てきますが、一人の人間が取りうるスタイルのクセを考えると、だんだん他人事には考えられなくなる筆致がまた見事です。
また、野球選手もそれぞれには繊細な個人であること、という事実との向き合いが随所にあります。分かっていそうで私たち、セレブリティとしてとらえがちな野球選手に対して、相当な無意識バイアスを持っていませんかね。私は少なくとも、そのバイアスが剥がれる感覚をこの本で持ちました。お世辞抜きに今まで生まれた野球に関する最高の本じゃないかな、と思います。
『The Bomber Mafia: A Dream, a Temptation, and the Longest Night of the Second World War』
Malcolm Gladwell (著)
東京大空襲を展開していた側にあったストーリーともいえる本書ですが、精密爆撃と絨毯爆撃の間で存在した派閥の戦いと、精密な側にあった技術進展に向けた独特のロマンを感じられるすごいストーリーです。実際に、ドイツや日本で展開されたのは絨毯爆撃でしたが、それを最後まで回避したい人たちの話が、21世紀になって掘り起こされてくるところに、グラッドウェル節の真骨頂があります。
ちなみにグラッドウェルのストーリーテリングの授業がMasterclassにあり、そちらもおすすめです。もしも、本当に悪い人一人だけを倒せるような爆弾が存在した時に、私たちはより多くの戦争を起こすのか、という問いも秘められている一冊。早く翻訳を待ちたく、また、できるだけ普通のタイトルにしてほしいな、、、と思う所です。
来年もよろしくお願いします
来年も引き続き、ご指導ご鞭撻を賜れますと幸いです。
昨年のご挨拶で引用した恩師が、今年はじめに逝去されました。先生に色々なことを教わり、また、ご縁を頂いた中で、何をしていけるのかを考える一年でもありました。様々な仕組みを維持したり、改変したりしながら、大変な時代を何とか支えて、未来に誇れる仕事をしていきたいと思っております。引き続きどうぞよろしくお願いします。